指先で撫でながらシート防水の下地検査
新築の建物の屋上は、すべてシート防水だった。建物の平面が複雑な凹凸で、さらに屋上には、さまざまな機械設備の基礎が多数立ち上がり、ドレインの位置が決まっているため、その水勾配をどうとるかが問題になった。
「図面通りに」と言うならば、水勾配の向きを単にドレインに向けて記載しただけの図面は、無責任極まりないと言わざるを得なかった。
最終的な判断を現場施工者にゆだねるならば、せめて現場が始まってから、その検討した図面を設計者側から提出すべきだが、そんな詰めをしないから、現場に頼りっきりになり、日本の設計の質はドンドン悪くなるのである。
ましてや、海外での工事と最初から分かってるのだから、いい加減な図面は描かないで欲しい。これは海外の現場で働く全ての人の意見だと思う。
ガーナ作業員も呆れた建設コンサル
話が逸れたが、屋上を単純に中央から左右に分けて、壁沿いに排水側溝をつけるのは、勾配コンクリート天端が厚過ぎ、さらに重量の点からも不可とされた。
残りは床の勾配を一直線にドレインまで導くしかない。が、それには複雑に三角形の勾配を組み合わせるしかない。図面で描くのさえ複雑なのに、現場で最も高い点を決め、そこから勾配を確保していくのは容易ではなかった。
おおむね勾配が決まった後、その表面処理を行うのだが、ここでもコンサルIさんは、なかなか下地の仕上げをOKしてくれなかった。確かにシート防水なので、表面のスムースな仕上げは必須だが、隅から隅まで指先でなぞりながら行う検査は、私の予想をはるかに超えていた。
現場のガーナ人の作業員は、半ば呆れていたが、理屈からすればIさんのやってる事は正しい。私も「はあ」と言いながら、指摘箇所にチョークで印を付けながら、Iさんの後をついてまわった。
この防水下地に関しては、延々と一週間、指摘と是正を繰り返して、やっとOKが貰えた。