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なぜ日本は「フルハーネス後進国」なのか?世界的メーカー3Mに聞いた

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公開日:2019.01.31 / 最終更新日:2019.03.12
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先進国でフルハーネス型安全帯を着ていないのは日本だけ

――海外の建設現場の安全帯事情を教えてください。

中辻? 3Mは、1940年に世界初の安全ブロックを開発し、以降約80年にわたり、墜落防止用製品を製造してきました。

フルハーネス型安全帯については、1970年代から約40年間、世界75カ国以上の国と地域で販売してきました。さらに2015年には、フルハーネス型安全帯をはじめとした墜落防止用製品を70年以上にわたり開発・販売してきたキャピタルセーフティ社(米国)を買収し、現在では年間約100万個のフルハーネス型安全帯を出荷しています。

数多くの国の安全帯事情を見てきましたが、先進国と呼ばれる国でフルハーネス型安全帯の着用が義務化されてないのは、実は日本だけなんです。アメリカでは、1998年にフルハーネス型安全帯の着用が義務化されています。もう20年以上も前のことです。

さらに、アメリカでは安全帯やランヤードにも輪をかけて厳しい規格があります。安全性能に求める水準が、日本とまるで違うんです。

例えば、アメリカでは巻取式ランヤードの性能規格で、巻取機構の強度まで求めています。ランヤードには、落下距離を最短に抑えるためのロック機能がついているものがありますが、墜落した人がパニックに陥って暴れたり、助けを求めるために動いたりして衝撃を与えると、ロックが解除され「二度落ち」してしまう例もあるんです。そのため、アメリカのランヤードは二度目の衝撃にも耐えられるように設計されています。

以前「施工の神様」でも、フルハーネス型安全帯と2丁掛けに関する記事が話題になっていましたが、アメリカでは2丁掛け(ダブルランヤード)が常識です。

――日本もアメリカと同じ規制・規格にすればいいのでは。

中辻? ただ、すべてアメリカと同じにすればいいというわけではないんです。日本とアメリカでは、建設現場での施工方法が必ずしも同じではないからです。

例えば、アメリカでは足場がない場所での鉄骨鳶の作業もあります。日本のほうが、安全性の高い現場環境を作ろうという意識は高いんです。また、安全への心構えも含めた職人一人ひとりの質や能力は、アメリカよりも確実に日本のほうが高いと思います。

少なくとも、製品自体の安全性を担保するようなレギュレーションはあるべきです。ただ、アメリカに倣って、厳格な規制と規格でがんじがらめにすればいいというものではありません。日本の建設現場に適したフルハーネス型安全帯やランヤードである必要があります。

5m超の高さでは、フルハーネス型安全帯の着用が義務

――今回の日本での法改正では、主に何が変わるのでしょうか。

中辻? 労働安全衛生法施行例の改正で、2月1日から高所作業でのフルハーネス型安全帯の着用が原則となります。作業箇所の高さによっては引き続き胴ベルト型安全帯の着用が可能な場合もありますが、作業箇所の高さが6.75mを超える場合、建設業では5mを超える場合に、フルハーネス型安全帯の着用が必須となります。

フルハーネス使用範囲のイメージ/ 3M

フルハーネス使用範囲のイメージ / 3M

また、過去には安全帯を着用したにも関わらず、使い方が誤っていて重大事故につながった事例があるため、フルハーネス型安全帯を着用して作業する場合には、事前に安全衛生特別教育を受講し、フルハーネス型安全帯や作業に関する知識や正しい使用方法を習得する必要があります。

さらに、フルハーネス型安全帯とランヤードの構造規格も国際規格に近づける形で変わります。既にフルハーネス型安全帯を使用している方でも、この新規格に適合していないものは、2022年1月2日以降は使用することができなくなります。

すでに日本でも、安全意識の高いゼネコンの現場を中心に、フルハーネス型安全帯の着用が広まってきました。それでも、まだまだ胴ベルト型安全帯が一般的です。

厚生労働省の「平成29年労働災害統計」によれば、「墜落、転落」による死傷災害は年間約2万件発生しています。これは、1日あたり50人もの作業者が墜落、転落により被災していることになります。フルハーネス型安全帯の着用義務化は喫緊の課題でした。

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この記事を書いた人

岡崎 太士
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「施工の神様」編集部。元・建設業界誌の編集記者。建設業界の中でも陽の当たらない、解体工事やアスベスト除去、建廃処理、労働安全衛生を主なテーマに活動していました。
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