施工の神様 powered by 施工管理求人ナビ
  • 施工の神様とは?
  • 記事掲載・取材をご希望の方へ
  • キャリアを考える
  • インタビュー
  • 失敗を生かす
  • 技術を知る
  • エトセトラ
  • 資格を取る
  • 建設用語

なぜ日本は「フルハーネス後進国」なのか?世界的メーカー3Mに聞いた

  • インタビュー
  • 技術を知る
公開日:2019.01.31 / 最終更新日:2019.03.12
  • シェア
  • Tweet
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 3 コメント
  • メールで共有

日本の建設現場向けのフルハーネス型安全帯

――海外では実績のある3Mですが、日本ではどのように市場展開していくのでしょうか。

中辻? 2017年の日本市場への本格参入に伴い、日本仕様の専用製品「3M DBI-サラ エグゾフィット ライト」を開発しました。さらに、フラッグシップモデルの「3M DBI-サラ エグゾフィット ネックス」と低価格モデルの「3M プロテクタ」の計3シリーズを販売しています。

それぞれの安全性能に大きな違いはありません。「安いものは安全じゃない」では、フルハーネス型安全帯としての意味がありませんからね(笑)。低価格モデルの「3M プロテクタ」でも、しっかりとした安全性能を確保しています。

例えば、墜落時の衝撃荷重を臀部に分散する「骨盤サポート構造」ですが、これがあるかないかで衝撃荷重はかなり大きく変わってくるので、全モデル共通仕様です。

他にも、X型背面ベルトを全モデルで採用しています。

こだわりを熱く語る。写真は「3M DBI-サラ エグゾフィット ライト」

40年の歴史が積み重ねたこだわりを熱く語る。写真は「3M DBI-サラ エグゾフィット ライト(V型腿ベルト)」

――日本で販売されているフルハーネス型安全帯は、Y型の背面ベルトも多いですが。

中辻 先進国でY型背面ベルトのフルハーネス型安全帯を使用している国は、ほとんどないと思いますよ。

X型のほうが身体を屈めたときに背中のベルトが突っ張らないので、動きやすいですし、墜落した時のことを具体的に想像していただくと分かりやすいのですが、ゆるく着がちなY型背面ベルトでは墜落時に体がすっぽ抜けるリスクがあります。

3Mでも、日本の既存市場に合わせて、Y型背面ベルトのフルハーネス型安全帯の開発も検討したんですよ。しかし、安全性能でのリスクを鑑みて、中止した経緯があります。

もう一つのこだわりは、胸ベルトのバックルですね。プラスチック製のバックルを使用したフルハーネス型安全帯を着用している方もいらっしゃいますが、墜落した際に身体を支え、胸ベルトのバックルにも荷重がかかるので、破断しないよう、高い耐久性が問われる部分なんです。

3Mのバックルは全て、耐久性の高い金属製を採用しています。アメリカで発展している都市は、塩害被害のある沿岸部に多いですよね。なので、防錆・防食の試験も徹底しています。

――フルハーネス型安全帯は、機能やパーツが多いですね。

中辻? この他にも、たくさんのこだわりがあるのですが、話しきれないのでこの辺でやめておきます(笑)。ただ、日本で販売しているフルハーネス型安全帯の基本的な安全性能は、3Mが海外向けに販売しているものと変わりません。

つまり、アメリカの厳格な規格をクリアした、高い安全性能はそのままということです。

それでは、どこを日本向けに改良したのかというと、主に作業性能です。

日本の職人は、慣習的に非常に重い道具ベルトを着けていますよね。総重量で13~4kgの道具ベルトを付けている方を見たことがあり、かなり驚いた記憶があります。

――たくさんの工具を携帯しますからね。

中辻? そのため、日本仕様のフルハーネス型安全帯は、道具ベルトとの組み合わせが容易な設計にしています。その他にも、「3M DBI-サラ エグゾフィット ライト」と「3M プロテクタ」では、日本の建設業界向けにH型腿ベルトを採用した新製品も開発しました。こちらは上半身と下半身のベルトを分けているので、ベルトが突っ張ることがなく、より動きやすくなっています。

シンプルでお手頃価格の「3M プロテクタ(H型腿ベルト)」。最軽量モデルで、動きやすさも兼ね備える

3Mのフルハーネス型安全帯には40年もの長い歴史があるので、安全性能は洗練され、ほぼ完成されているんですよ。ですので、最近では安全性よりも作業性が進化してきました。

安全性だけを追求することはできます。ただ、それで使い勝手が悪かったら、どれだけ安全でも使ってくれませんし、動きやすいように着崩してしまったら元も子もないですよね。

だからこそ、安全性と作業性は両立させなければいけません。

40年以上蓄積された、実用性の高いフルハーネス型安全帯をつくるための経験とユーザーの声を、製品にフィードバックし続けてきたことが、3Mのフルハーネス型安全帯の一番の強みでもあります。

建設現場から落下するのは人だけじゃない

――フルハーネス型安全帯以外の製品で販売に注力していくものは。

中辻? 墜落制止用製品と聞くと、日本ではどうしても「胴ベルト型安全帯とランヤード」、もしくは「フルハーネス型安全帯とランヤード」という認識になりがちですが、3Mでは「A」「B」「C」「D」「E」「F」という6つのソリューションを展開しています。

Aは「Anchorage Connectors」、アンカー類ですね。フルハーネス型安全帯を着用していても、ランヤードを掛けられる箇所がなければ、当然地面まで落ちますから。3Mでは、H鋼に取り付けることでアンカーポイントを造れる「固定式ビームアンカー」などを販売しています。

Bは「Body Support」は、フルハーネス型安全帯のこと。Cは「Connectors」で、アンカーとフルハーネス型安全帯を繋げるもの、つまりランヤードのことですね。

Dは「Descent and Rescue」。ちょっと分かりにくい言葉ですが、降下・救助器具のことを指します。墜落した方が自分で降りたり、救助者が助けるための器具ですね。Eは「Education」で、先ほどお話したデモンストレーショントラックやプロモーションムービーを使った啓蒙活動を指します。

最後に、Fは「Fall Protection for Tools」。人の墜落ではなく、落下するモノから人を守るための製品のことです。

工具落下防止用製品。ポーチ(右下)は特殊な弁構造で、留め具がないのにひっくり返しても物が落ちない

フルハーネス型安全帯の話からは離れてしまいますが、工具の落下は日本でも非常に大きな問題となっています。

先ほど、日本の職人はかなりの数の工具を携帯するという話をしました。2017年には、工具などの落下物が原因の死傷者は6,374人、このうち43人もの方が亡くなっていることは、あまり知られていません。

3Mの行った実験では、3.6kgのレンチを60mの高さから落下させると、衝撃荷重は1tを超え、ヘルメットやコンクリートも簡単に破壊するほどの威力となり、小さな工具でも高所から落下すれば、重大な労働災害につながります。

工具の落下による事故は海外でも数多く発生しています。こうした状況を鑑み、3Mではポーチやホルスターなどの工具落下防止用製品を、昨年7月から日本でも販売しています。

3Mでは、高所作業に係るすべての方の安全を守るため、フルハーネス型安全帯だけでなく、トータルで提案していきたいと考えています。

次のページフルハーネスを着る意味とは
«12345»
  • この記事をシェアする249
  • この記事をツイートする18
この記事のコメントを見る3
こちらも合わせてどうぞ!
ちょっと待った!フルハーネス型安全帯の義務化と2丁掛けの盲点
ちょっと待った!フルハーネス型安全帯の義務化と2丁掛けの盲点
フルハーネス型安全帯の義務化は必要か? 古今東西どこの現場に行っても「安全第一」は普遍のテーマ。 今日も、現場監督・現場監理・職人たちが一丸となって「本日もご安全に!」と朝礼をした現場がほとんどでしょう。職人の安全、近隣...
VRで死を体験。大東建託が恐怖で安全意識を向上させる新技術
VRで死を体験。大東建託が恐怖で安全意識を向上させる新技術
大東建託の安全管理部門 建設業界の最優先事項は「安全」である。 しかし、建設業界の労働災害は、全業種のなかで最も多く、若者が建設業への就職を避ける要因にもなっている。建設労働災害の中でも、とりわけ多いのは、高所からの「墜...
BIMを活用したいけれど、どうすればいい? アウトソーシングや人材派遣で解決しよう
BIMを活用したいけれど、どうすればいい? アウトソーシングや人材派遣で解決しよう
※本記事は『建設ITワールド』の許諾を得て掲載しています。 「BIMを活用したいけれど、人材が見つからない」「どう始めたらいいの?」—そんな悩みを解決するのが、ウィルオブ・コンストラクション(本社:東京都新宿区)が提供す...
「下ネタと安全帯が当然」の建設現場は嫌だ!24歳女性現場監督の告白
「下ネタと安全帯が当然」の建設現場は嫌だ!24歳女性現場監督の告白
「けんせつ小町」として建設業を諦めたくない! 建設業のオジサマたちは、若い「けんせつ小町」たちと、どうやって接していますか? これから建設業界にも若い女性技術者が増えてくると思いますが、一歩間違えればセクハラで訴えられる...
「おままごとじゃないし!」けんせつ小町に聞いた「ヒミツ道具4種」
「おままごとじゃないし!」けんせつ小町に聞いた「ヒミツ道具4種」
増え続ける「けんせつ小町」 男社会だった建設業界にも、ようやく女性の職人や現場監督、いわゆる「けんせつ小町」が多くなってきています。以前に比べると建設現場に女性が来ることも珍しくなくなり、それに合わせるように現場事務所の...

この記事を書いた人

岡崎 太士
この著者の他の記事を見る
「施工の神様」編集部。元・建設業界誌の編集記者。建設業界の中でも陽の当たらない、解体工事やアスベスト除去、建廃処理、労働安全衛生を主なテーマに活動していました。
建設関係の方もそうでない方も、気軽にご連絡ください。「施工の神様」に対するご意見やご批判、一緒に飲んでみたいなど、どんな内容でも構いません。
MAIL:taishi.okazaki@willof.co.jp
Facebook:https://www.facebook.com/taishi.okazaki.9
非公開: 【西日本vs東日本】工事道具の違いあるある(土木編) 非公開: 【西日本vs東日本】工事道具の違いあるある(土木編)

施工の神様をフォローして
最新情報をチェック!

  • フォローする5388

現場で使える最新情報をお届けします。

  • 施工の神様
  • エトセトラ
  • 非公開: 【西日本vs東日本】工事道具の違いあるある(土木編)

コメント(0)

コメントフォームへ

コメントする コメントをキャンセル


コメントガイドラインをお読みになった上で投稿してください。

email confirm*

post date*

あなたも施工の神様に記事を投稿してみませんか?
おすすめ記事
  • 【髙松建設】「古来の技術と新たな発想を融合する」世界最古の企業”金剛組”再生でベスト・プロデュース賞を受賞

    【髙松建設】「古来の技術と新たな発想を融合する」世界最古の企業”金剛組”再生でベスト・プロデュース賞を受賞

  • 点数稼ぎに走るのは「なんか違う」

    点数稼ぎに走るのは「なんか違う」

  • 「暗闇の先の光見て」コロナ禍の”希望のトンネル貫通写真”が心に響く

    「暗闇の先の光見て」コロナ禍の”希望のトンネル貫通写真”が心に響く

  • 「地元の人間の意地。ただ、それだけ」 家族を失ってもなお、愛する石巻の復興に命を懸けた現場監督

    「地元の人間の意地。ただ、それだけ」 家族を失ってもなお、愛する石巻の復興に命を懸けた現場監督

  • 建設業界をイヤになった主任技術者は”造園”へ急げ!

    建設業界をイヤになった主任技術者は”造園”へ急げ!

  • 人と機械はどう補完? これからの橋梁点検

    人と機械はどう補完? これからの橋梁点検

注目のコメント
  • 権力を振りかざす世間知らずの勘違い野郎どもは本当に消えていただきたいです。

    「○んでくれ」「くせーんだよ」 発注者からの脅迫・暴言集【実録】
  • 公務員なんて、甘ったれのわがまま人間の巣窟。特に、バブル世代にパワハラとかするのが多い気がする。

    「○んでくれ」「くせーんだよ」 発注者からの脅迫・暴言集【実録】
  • 34℃で湿度がどれくらいか判断出来ないが今日びの38℃超え猛暑に比べればまだまし。 皆が言う体調管理なんかで対応出来る範囲を超えている。 朝一番から警戒レベルMAXが普...

    最高気温36℃の”猛暑日”。舗装工事は中止すべきか?【熱中症対策】
  • 勝手に喫煙休憩するな→即飛び蹴り シュールなコントみたいだな

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • 辞めていいんじゃねーか? 下請けの奴隷ならともかく、大手ゼネコンの現場監督ならやりたい奴いくらでもいるだろw

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • 若くても無能なら要らない

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • そんな無能はやめた方が現場のためだよ

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • 飛び蹴りは普通に罪にならないか?

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • 休憩するなら水分取るだけで充分なのにねwタバコまで吸いに行き注意されると即飛び蹴りとはヤニ中毒は危険だな

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • 結局本人の申告によるものでしかないので、無理がありますよ。 すべての作業員さんにカメラつけて録画でもするならば別ですが。 公共工事にしろ民間工事にしろ、昔からすれ...

    「チェックシートで熱中症を防ごう!」 それができたら誰も苦労しない
  • 熱中症チェックシートは本当に不毛。 挙句の果てに、それを書いていても熱中症が発生したら「管理が甘かったからだ!」といってチェック項目を増やしたり、記入内容の真偽を...

    「チェックシートで熱中症を防ごう!」 それができたら誰も苦労しない
  • 建設業界のパワハラと言うよりは特定の会社の特定の上司のパワハラ。

    元自衛官が建設業界に転職したら、”パワハラの巣窟”でした
  • 返信した人の日本語もわかりません。 やり直し

    元自衛官が建設業界に転職したら、”パワハラの巣窟”でした
  • 建設業界って 何処に業界のパワハラをかいてるの? やり直し

    元自衛官が建設業界に転職したら、”パワハラの巣窟”でした
  • 所長が部下の人間性を否定するような現場がうまく回るはずがない。 現場は信頼関係で成り立っている。 現場の雰囲気は主に所長がつくりあげあてしまう。そのような管理職が...

    65歳以上と外国人は、全員”安全弱者”のヘルメットバンドをつけろ!? 納得できない話
  • この著者は神様とは思えないです まず、職人は工程を縮めたいんじゃなく無駄が嫌いなんです。それは管理者もだと思いますよ。 無駄=損害ですからね。

    「不仲説」 現場監督と職人
  • スーパーゼネコンの監督とは仲良くなれないな。

    「不仲説」 現場監督と職人
  • まったく現場の事を理解していない! もっと色んな事を経験して、勉強して下さい。

    「不仲説」 現場監督と職人
  • 不仲は横柄で生意気ななゼネコンのセコカンが原因だと思いますけどね。 舐められない様な教育受けているので仕方ない所もありますが。 職人さんも見栄えよりも工数へらして...

    「不仲説」 現場監督と職人
  •  不仲なら発注しない、請負わない。 お互い仕事できなくなればいい。

    「不仲説」 現場監督と職人
  • キャリアを考える
  • インタビュー
  • 失敗を生かす
  • 技術を知る
  • エトセトラ
  • 資格を取る
  • 建設
    用語
【PR】施工管理技士の転職に特化した求人サイト
施工の神様ロゴ
  • 施工の神様とは?
  • 原稿募集
  • 取材ライター募集
  • 運営会社
  • PR・プレスリリース
  • プライバシーポリシー
  • 広告掲載について
  • お問い合わせ
Copyright © 2025 WILLOF CONSTRUCTION, Inc. All Rights Reserved  リンクフリー
施工の神様