エクセルは「ちょっと賢い紙」程度
――インパクトコンストラクションを始めた目的は?
川合 会社が急激に大きくなって、仕事の受注も増えていったので、いずれ建築の現場監督の人数が足りなくなるのが目に見えていました。
当時は、他社と同様、エクセルで原価管理をしていたのですが、エクセルは言ってしまえば、紙と大差ないんです。「ちょっと賢い紙」程度のものだと思います。やはり、ここはIT化して、現場の働き方を効率化していく必要があると考えました。
以前の加和太建設と同じく、多くの中小建設会社は、いまだに原価管理の業務プロセスを明確化できていません。また、データを蓄積するのは大好きですが、データを活用していません。そもそも紙やエクセルでは、活用しにくいと思います。
ところが当時、現場で本当に使える原価管理システムがありませんでした。「じゃあ、自分たちでつくろう」ということになったわけです。加和太建設とコンサルティングファーム、ITベンダーとで一緒に開発を始めました。
加和太建設からは建築部門のトップが参加しました。現場の「あるある」などを取り入れながら、つくっていきました。プロトタイプの完成までは約半年間。実際に使いながら、修正を加えていきました。
開発に当たっては当然、使いやすさも重視しました。加和太建設には70歳の超ベテラン現場監督がいるのですが、普通に使っています。インパクトコンストラクションの特長は、インターフェイスがシンプルなことです。エクセルに寄せてつくっているので、違和感がなく、使いやすいんです。
――最初は自社で使うために作ったんですね。
川合 そうなんです。たまたま人のつながりがあって、香川県の小竹興業様から、使ってみたいというお話があったので、ご提供しました。
労働時間を年15日短縮、民間入札の勝率は2倍に
――自社で使ってどうですか?
川合 インパクトコンストラクションは、加和太建設の成長を支えているシステムです。システムを使い始めてから、民間入札の勝率は2倍以上に上がっています。社員の労働時間もかなり削減できており、現場監督1人当たり年間15日、1日換算で30分の時間短縮になります。これを実現しながらも、堅調に利益を確保し続けています。
つまり、加和太建設では、このシステムを入れることによって、労働時間を減らすと同時に、利益も上がっています。生産性を向上させるシステムなのです。
これは魔法でも何でもなくて、エクセルで原価管理することによって、いろいろなムダが発生していたものが、インパクトコンストラクションの導入によって、これらのムダがなくなったのです。
加和太建設では、インパクトコンストラクションを開発するに際し、経営コンサルを入れて、原価管理の業務プロセスそのものを見直して、シンプルなものにしています。また、すべてのデータ履歴を閲覧できるので、データの活用も容易です。思いっきり活用しています。
また、インパクトコンストラクションの導入によって、仕事が標準化されます。エクセルの場合、人によって使い方が違ったりするのですが、そういうことがありません。みんな同じやり方なので、ストレスは少ないと思います。今の若い人には刺さるんじゃないかと思っています。
例えば、若い子が現場監督になって、初めて「コンビニを建築する」とします。『以前、先輩がコンビニを担当していたよな。どういう業者さんを使って、上長とどういうやりとりをしながら、工事していったんだろう』。インパクトコンストラクション上には、そういう情報が全部積み重なっているので、参考にしながら仕事ができます。エクセルシートだと、こうはいきません。技術者を育てる上でも役に立っているのではないかと思っています。
権力を振りかざす世間知らずの勘違い野郎どもは本当に消えていただきたいです。