インフラ技術の海外輸出の調査研究に従事
――現在はどのようなお仕事をしているのですか?
ドイル恵美さん 2019年4月から、京都大学経営管理大学院の国際メガ・インフラアセットマネジメント政策寄附講座で特定講師として働いています。
この講座では、「我が国のインフラ・マネジメント技術の継承・発展のための実践的研究」をテーマに、日本のインフラ技術を海外に輸出するときに、どういう手法が良いかとか、どういう人材を育てたら良いかなどを調査研究しています。ほかには、京都市内にある女子大学で「構造力学」、京都大学では「プロジェクトマネジメント」の講義を行っています。
その前は、2014年から経営管理大学院経営管理センターの特定研究員として、博士課程と並行して、仕事をしていました。そのときは、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」という枠組みのもと、橋梁のアセットマネジメントに関する調査研究に従事していました。工学博士を取得したのは2018年です。6年かかりました(笑)。
国際協力は「毎日がアドベンチャー」
――建設、建築の世界にどのようなカタチで入ったのですか?
ドイル恵美さん 私は奈良出身で、大阪工業大学の建築学科で地震工学を学びました。その後、大阪の株式会社藤木工務店というゼネコンに就職し、構造設計の仕事をしていましたが、入社4年目の時に辞職して青年海外協力隊として、地震工学を教えるため、2年半ほどラオスの大学に派遣されました。小さいころから「海外に行きたい」という強い思いがあったからです。
当初は「地震工学を教えてほしい」と言われたのですが、当時、現地にはコンクリート基準すらなかったので、まずは「基本のコンクリートづくりでしょ」ということで、暑中コンクリートの実験を行いながら、地震工学も教えていました。
――教えるのは英語で?
ドイル恵美さん それがラオス語だったんです(笑)。ラオスに行く前に3ヶ月間ぐらいラオス語のトレーニングを受けたのですが、それだけでは専門的な会話はできません。実際には、英語を使って教えていました。幸運にも、学校の先生や生徒は、一部英語ができたので、かれらが通訳してくれました。
実際に発展途上国に行ってみると、日本より肌に合っていて、とても楽しかったのを覚えています。「毎日がアドベンチャー」みたいな感じで(笑)。
――「肌に合う」とは?
ドイル恵美さん 日本だと「みんなに合わせなきゃ」という「ワク」みたいなものがあったのですが、「外国人でいる」ということは、そういう文化風習に縛りがなく、自分らしく、自由に振る舞うことができました。もちろん、その国の文化風習を尊重はしますが、空気を読まなくてよいのです。
そして、基本ボランティアなので、自分が「こうしたい」と思うこと、提案することは、ドンドン受け入れてもらえました。当時のJICAには研究費というのがあって、それを支援していただき、コンクリートの研究プロジェクトを実施することができました。青年海外協力隊は、心が強くなるので若い人にはオススメです。うまくいかないことの連続なので、逆境に強くなれます(笑)。
日本の場合、工期までにきっちり仕事するのが普通です。海外では、工期の直前なのに、なにもしていないということがちょくちょくあります。私自身「大丈夫なの?」と何度もヤキモキしたことがありますが、最終的には、なぜか工期に間に合うんです(笑)。現地の人の「底力がスゴイな」と不思議でした。もちろん、本当に工期に間に合わなかったこともありましたけど(笑)。
すごい方がいらっしゃるんですね。同じ女性として感動しました!