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【”3.11″から10年】初動対応の陣頭指揮を執った国土交通省・東北地方整備局の奮闘

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公開日:2021.03.10 / 最終更新日:2021.03.16
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震災の教訓を紡ぐ「3.11伝承ロード」

――貴重なお話ありがとうございます。発災時での独自の工夫、地域建設業との連携が強固であったことなどが、被害を抑制できた教訓であると思いました。そして、この教訓を次の世代に繋いでいくためにも、「震災伝承」の取り組みが重要になるかと思います。

佐々木博樹氏(以下、佐々木専門官) 2018年7月に、東北地方整備局と青森・岩手・宮城・福島の被災4県と仙台市から構成する「震災伝承ネットワーク協議会」が設立されました。

これは、震災の風化を防ぐ意味に加え、各地に点在している震災遺構や伝承施設を「震災伝承施設」という名称で登録し、点から線、線から面へとネットワーク化することで、効果的・効率的に震災の教訓を伝えていくことを目指したものです。

――「震災伝承施設」とは。

佐々木専門官 東日本大震災から得られた実情と教訓を伝承する施設で、次の項目に該当する施設からなり、2021年2月時点で271件が登録されています。

  1. 災害の教訓が理解できるもの
  2. 災害時の防災に貢献できるもの
  3. 災害の恐怖や自然の畏怖いふを理解できるもの
  4. 災害における歴史的・学術的価値があるもの
  5. その他(災害の実情や教訓の伝承と認められるもの)
「震災伝承施設」の分類 / 出典:国土交通省

「震災伝承施設」の分類 / 出典:国土交通省

これらの「震災伝承施設」は、マップや案内標識の整備によりネットワーク化を図っており「3.11伝承ロード」として、防災や減災、津波に関する「学び」や「備え」について様々な取り組みを展開しております。

こうした活動を通じて、防災意識を向上させるとともに、地域や国境を超えた人々との交流も促進させることで、災害に強い社会の形成と地域の活性化を目指しています。

「3.11伝承ロード」のイメージ

「3.11伝承ロード」のイメージ

「3.11伝承ロード」における具体的な取組み / 出典:国土交通省 東北地方整備局

「3.11伝承ロード」における具体的な取組み / 出典:国土交通省 東北地方整備局

現在、「3.11伝承ロード」の取り組みに関する認知度を高めるために、東北各地の地方自治体の施設や道の駅、大型ショッピングセンター等の民間施設でパネル展示を開催するなど、普及活動につとめています。今後は東北以外の全国各地でも開催していきたいと考えております。

東日本大震災の教訓を防災のツールへ

――「震災伝承施設」で最も伝えたいことは。

亀井督悦氏(以下、亀井調整官) 東日本大震災は、貞観地震以来、世界的に見ても1,000年に一度の大震災です。マニュアルにないことを事務所長や出張所長が実行された例、工夫された例もあれば、逆にできなかった教訓も多々ありました。

そうした事実や教訓も含めて、すべてを後世に伝えていくべきだと考えています。「3.11」のことは、徐々に忘れ去られつつあるのが実情ですが、日本は毎年、どこかで災害が起きています。今後、東南海地震、南海トラフ巨大地震なども想定されていますし、先日も福島・宮城をM7.1の地震が襲いました。

ですから、「震災伝承施設」を訪れていただき、いま一度ご自身の住まわれている地域についての防災意識を向上させるツールとしていただきたいですし、来訪された際には地域の名所も回っていただければ、地域の活性化にも繋がります。

津波に呑まれた「道路パトロールカー」(仙台合同庁舎B棟1Fに展示)

津波に呑まれた「道路パトロールカー」(仙台合同庁舎B棟1Fに展示)

――被災地以外の建設業者も、「3.11伝承ロード」を研修で回ってみる試みがあっても良いですね。

亀井調整官 建設業者の皆様が、10年掛けて三陸沿岸道路を復興させてきました。復興道路・復興支援道路は次々と開通しておりますが、これは”次世代の東北の礎”になります。一連の復旧・復興活動について、それぞれの会社の中で継承していくこともとても大切なことだと思います。

真の「防災意識社会」を目指して

――「防災」に関して、私たちは日頃どのような意識を持つべきでしょうか。

鈴木課長 防災は、国民一人ひとりが主体的に考えなければならないものだと思います。「災害が発生した時、どのような行動をすべきか」は、住んでいる場所や立場によっても異なります。したがって、日頃から一人ひとりが意識し、行動していくことが「防災意識社会」の構築に繋がっていくのではと感じています。

亀井調整官 東日本大震災を契機に、ハード面の整備は進んでいます。例えば、三陸沿岸道路は、災害発生時にも物流が滞ることがないよう高台に建設しており、東日本大震災と同等の災害が発生しても、物流が途絶するようなことはないでしょう。

しかし、ハードだけですべてがカバーできるわけではありません。どれだけ防潮堤を高くしても、それ以上の大きな津波が押し寄せてくれば、被害は及んでしまいます。

人命を守るために大切なことは、「防災意識社会」を国民一人ひとりの中に根付かせることです。ご自身がお住まいの地域のことを、より深く知ることが防災に繋がります

佐々木専門官 「震災伝承施設」の目的にも繋がりますが、国民一人ひとりが防災について「自分ごと」として捉え、決して人任せしないことが大切です。

来訪者の一人ひとりが「教訓を次世代に伝えていく」という心構えで、施設を巡っていただけることを願っていますし、「震災伝承施設」で学んだ教訓や備えをそれぞれの地域に持ち帰り、広めていただくことで、日本全体の防災意識の向上に繋がれば幸いです。

「3.11伝承ロード」のロゴ

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この記事を書いた人

長井 雄一朗
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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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コメント(1)

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  • - 2021/03/17 15:12

    3.11発生時の現場がどうなっていたかが分かるとても良いインタビューでした。これを教訓に出来た防災マニュアルは素晴らしいものだろうなと思います。そう思うと同時に自分の地域はどうなんだろうと不安にかられました。今シーズン想定外の大雪でさえ除雪機能が麻痺しかなり社会生活に影響が出ました。役所からの指示も苦情が出たから除雪に出てほしいという指示とは言えないものでした。現実、雪を置く場所がなく排雪作業にかからないとどうにもならない状況でした。ニュースでは今後の対応会議が~とやってましたが建設業者(除雪作業を行う会社)の意見を聞いた形跡は無かったように思います。別記事でもあったようなクシの歯作戦のようなものは見えてないような気がします。非常に不安です。もっと横のつながりを持って良いものは取り入れてほしいです。きちんと頑張らせてほしいです。

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