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「サプライチェーンのリスク管理」が建設会社の存続にかかわる時代。”建材調達先のサステナビリティ”を評価する意味とは?

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公開日:2022.10.14
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エコバディス社は、バイヤーが約760社、サプライヤー約9万社(日本約3,500社)での評価実績を持つフランス企業。こうした評価システムは、海外では、公共工事の入札条件になっている場合も多く、今後日本でも法制化される予定だ。エコバディス社の評価システム導入のメリットは、一度回答するとその結果を複数バイヤーに共有でき、サプライヤー側企業の負担を軽減できる点にある。

エコバディス社のサステナビリティ評価の特徴は、「環境」「労働と人権」の2点が質問の多いボリュームゾーンであり、ほか「倫理」や「持続可能な調達」の2点。サプライヤー側がこの内容の質問書を回答すると、専門家による分析が行われ、評価結果のスコアカードについては、大東建託など複数のバイヤー企業が共有できることになる。

エコバディス社の概要について(2022年9月記者発表時点)

エコバディス社の概要について(2022年9月記者発表時点)

将来的には”上位ランク”と優先的に契約することも検討

「評価については、A・B・Cといった段階評価ではなく、各企業をそれぞれ100点満点で評価しています。中でも、ある一定以上の点数を獲得した上位企業に対してはプラチナ、金、銀、銅のメダルが付与されます。現段階ではメダルに固執するわけではありませんが、定量的な評価が可能になります。将来的には、メダルが上位なところを優先的に契約していくことはありえます。ただし評価が低い企業をバッサリと切り捨てるのではなく、メダルのランクの低い企業を高いメダルに向上させていくため、是正について双方で協議していきたい。そこでサプライヤー側に是正の意思があるのかないのか、その是正期間がどのくらいなのかを協議しながらの運用になるでしょう」(大久保課長)

エコバディス社の評価の特徴は、「回答に対してのエビデンスを求める」と「専門のCSR有識者が公平に評価を実施する」の2点あり、結果、同業他社と比較して優位性が高いと評価して採用を決定した。さらに、「評価基準(ESG+調達の4軸)であること」「グローバルスタンダードな基準であること」「サステナビリティリスクを見える化(定量スコア化)できること」や「サプライヤー負担を軽減できること」もあわせて採用のポイントになった。

とくに大東建託をはじめとするバイヤーとサプライヤー側の間にエコバディス社が入ることにより、サプライヤーの回答は1回で済むことになり、負担軽減の効果は期待できる。これまでは各バイヤーからの質問書に個別にサプライヤー側が対応し、負担も多かった。そこでエコバディス社に集約することでサプライヤー側の回答負担が減少するという効果が生まれるわけだ。

エコバディス社の評価は、「環境」と「労働と人権」が主軸

エコバディス社の評価は、「環境」と「労働と人権」が主軸

エコバディス社は日本の建設業界についてどう見ているのか。今回、エコバディス・ジャパン株式会社の代表取締役である若月上氏が記者会見にあわせてコメントを寄せている。

「周知のとおり、建設業界は世界的により持続可能なビジネスモードへの移行という課題に直面していますが、大東建託が業界において日本国内初の持続可能な調達管理体制強化に本格的に取り組むことは、業界のみならず日本企業としてバリューチェーンにおけるサステナビリティの改善と向上に貢献するものと確信しています」(若月上氏)

今後の施策については、「まずは3年間のトライアル期間として実施」「3年間は評価結果により発注量などの取引きを左右しない」や「サプライヤー企業への導入支援などを行い、定着させることを優先する」の3方針を定めた。ロードマップとしては1年目が”周知する年”、2年目が”増加する年”、3年目が”総括する年”と定めた。

6月23日には、「大東建託からサプライヤーへの説明会・協力依頼」を、7月12日にはエコバディス社から直接の説明を受ける場として、「エコバディス導入支援説明会」を、その後サプライヤー側からCO2削減といっても何から着手すればよいかわからないなどのさまざまな質問もあったことから、8月23日には「大東建託CO2集計業務サポートセミナー」をそれぞれ開催している。同セミナーでは、103名が参加、「資料と動画を社内で共有する」や「コンサルを依頼したい」とサプライヤー側から前向きな意見も寄せられたことから、今後も定期的なサポートセミナー実施を開催する。

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3年後は、登録しなければ一定の判断も

「この3年間に関しては登録・評価を受けないからといって、契約において罰則や制限をかけることはいたしません。半強制的な取組みではなく、まずはお声がけさせていただき、当社のサプライチェーン全体で透明性を増していく呼びかけに対して、同調してくださいという姿勢で進んでおります。ただし、3年もたちますと日本を含めた世界的な法改正が進展していきますので、その段階で判断は入ると思います」(大久保課長)

ちなみに、従業員100人未満のサプライヤー企業の費用は大東建託が負担する。このほか、「やったことはないけど良い機会だから勉強して取り組みたい」や「親会社が回答しているが、業種の範囲が広いので、建材のみの子会社でも参画する」との意識の高い意見もあったが、「ISO14001やISO9001の認証を取得しているので辞退する」と辞退を表明するサプライヤー企業もあった。

「現在、ISOを理由で辞退されている企業は2社あり、いったんお受けしています。ただ2年目に向けて今後、半年くらいかけてお話をするつもりでいます。エコバディス社の評価システムとISOとの違いについて、説明して登録に取組んでいきたい」(大久保課長)

なお8月1日から、「取組み開始、各サプライヤーによる登録作業」をスタートしており、サプライヤー側の質問書の発信も実施中だ。今期でいったんは回答の受付を締切り、2月に集計を完了する形で動いている。

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3年間で全体の70%の登録目指す

「まずは30~50社が登録し、これから本格的に登録を呼び掛けていきます。3年後には169社のうち約70%の登録を目指していきたい」(大久保課長)

2年目からは、協力の呼びかけ、取組み継続(回答サプライヤー拡大)をスタートするが、実は大東建託にはサプライヤー側からは、「今期から取組むのは正直難しい。今年には体制を整えるので、来年からの参加とさせていただきたい」と前向きな回答もあり、参加するサプライヤー側を着実に増やす方針だ。一方、バイヤー側である建設業界、とりわけハウスメーカーなどにも参加を呼び掛けていく考えも明かした。あわせて、是正プランの実行やESG 評価機関へ報告も行う。3年目からは、国際情勢を鑑み、取組みの総括を行い、今後どのような方針で進むかについて検討する。

そして、大東建託が最終的に目指すゴールとはどのようなものか。サプライヤー側は自社の取引きの透明性を示すことができ、大東建託などのバイヤー側は、安心してサプライヤーから調達ができる関係性を構築することにより、ステークホルダー、この場合はアパートなどのオーナー、入居者あるいは株主にあたるが、安心して託すことができる。そこで建設業全体のサプライチェーン上のリスクがなくなり、持続可能な安心・安全なサービス・商品提供を行う世界が実現する。さらに業界で一体となって取組むことでサプライヤー・バイヤー側ともにメリットがあるため、建設業界で連携して一本化を目指す方針を示した。

来年度から同業他社にも参加呼びかけへ

「1年まずわれわれが体験してみて、いいところや悪いところを実感したうえで、来年度以降にバイヤー側であり、パイプのあるハウスメーカーなどと接点を持ちながら、一緒にやっていきましょうとの呼びかけをしていきます。それ以外としては、当社が加盟している一般社団法人日本ツーバイフォー建築協会などの住宅関連団体で、当社の取組みとして紹介していくとともに、サステナビリティを判断していただけるような方が集まる会合でPRすることで、当社の取組みに共感していただけるようお声がけをしていきたい」(大久保課長)

社内体制では、技術開発部が窓口として主管するが、この理由は環境分野や調達分野を担当しているため。一方、「労働と人権」は人事部・総務部・安全品質管理部が、「倫理」については経営企画室が対策を講じるほか、法務部・リスク管理部・コンプライアンス推進室などとも連携する一方、本社内に「サステナビリティ執行企画会議」という組織体を設けており、対応責任部門を協議するという体制により、全社横断的に取組む方針だ。

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この記事を書いた人

長井 雄一朗
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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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