「建設業働き方改革加速化プログラム」の狙いとは?
――ずばり「建設業働き方改革加速化プログラム」の狙いは?
国交省 働き方改革を通じて建設業の入職者を確保しようというのが「建設業働き方改革加速化プログラム」の最大の狙いです。
建設業の担い手は、およそ10年後に団塊世代の大量離職が見込まれています。建設業で働く60歳以上の高齢者は約81.1万人と、全体の24.5%を占めていますが、その離職した分を補うべき29歳以下の若手入職者は、その半分にも届かない約36.6万人で建設業全体の11%に過ぎません。「建設業働き方改革加速化プログラム」は、建設業の将来の人手不足を解消するための国の本気度を示しています。
――建設業の好景気は「2020年の東京オリンピックまで」と不安視する声もありますが、それ以降も人手不足は続きますか?
国交省 建設投資全体は、2020年以降もそれほど減少しないだろうと予測されています。防災・減災対策や老朽化した橋やトンネルなどの社会インフラのメンテナンス、さらに民間の都市開発なども見込まれています。20年以上経過したマンションも増加しており、大規模修繕工事も待ったなしです。そこで問題となるのが、こうした需要に対応できる担い手を、いかに確保・育成するかです。
建設業の賃上げ問題
――建設業は他産業よりも賃金が安いのも問題ですね。
国交省 建設業の賃金は、製造業と比べて低い傾向にあります。2017年の建設技能労働者(男性)の平均年収は約444万円。一方、製造業の生産労働者(男性)は約470万円と約5%の差があります。6年連続で設計労務単価を引き上げており、2012年と比較すると13.6%の上昇になっていますが、それでも5%の開きがあるという状況です。さらなる建設業技能労働者の賃金引き上げが求められます。
また建設業ならではの課題として、建設技能労働者の賃金のピークが45歳~49歳で、その後、年をとるにつれて給与も下がるという点があります。一方、製造業の賃金のピークは50代ですので、建設技能労働者も経験に応じた給与を確保する必要があります。
そこで、今秋から稼働する「建設キャリアアップシステム」では、建設技能労働者の経験や資格、マネジメント能力などを4段階で評価し、そのレベルに応じた給与処遇を実現する方針です。「建設キャリアアップシステム」は今後5年間で、全ての建設技能労働者(平成29年時点で331万人)の加入を目指します。
――設計労務単価を引き上げたのは素晴らしいですが、下請会社まで行き渡っていないという指摘もありますが?
国交省 その点に関しては、石井啓一国土交通大臣が3月27日に「公共工事と民間工事を問わず、建設業の担い手確保のために、目に見える形で賃上げを実現して欲しい」と、日本建設業連合会や全国建設業協会、全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会に対して、直接要請しました。その他の団体も含めて、108の全ての建設業団体に文書で要請しました。引き続き設計労務単価の改訂が下請会社にも浸透するよう、建設業団体に対して具体的な取組を求めていきたいと考えています。