今、話題となっている人手不足倒産だが、帝国データバンクの「人手不足倒産」の動向調査(2018年上半期)のリポートによると、業種別では過去5年半累計の最多は「建設業」(139 件、構成比33.3%)で、「サービス業」が123 件(同29.5%)。この2 業種で全体の62.8%を占めている。
好景気に沸く建設業界の死角は、人材と資材の高騰だ。同社の「2016 年度・未上場総合建設業者の経営実態調査」からもそれを読み取ることは可能だ。上場企業の倒産の予兆は現在のところ見当たらないが、問題は未上場の中小建設企業である。
同実態調査によると、2016 年度の未上場建設業者1万2,240社の売上高合計は23兆5061億円、前年度から0.9%の増加となった。伸び率が鈍化したこともあり、未上場建設業者にとっての景況感は踊り場にいると言って良い。
帝国データバンクの瓦田氏に解説してもらおう。
20億円未満の建設会社は外注低下
――まず「2016 年度・未上場総合建設業者の経営実態調査」の結果について。
瓦田真人氏(以下、瓦田) まず調査では意外な結果が出ました。「労務・外注費率」の平均は上昇トレンドが続くと見込んでいましたが、54.4%で前年度比0.1ポイント低下しました。ただし、地域別にみると、9地域中5地域で売上高合計が増加するとともに、「労務・外注費率」は5地域で上昇し、都市圏では高止まりの傾向が続いています。
――なぜこのような結果に。
瓦田 全体の労務・外注費率を押し下げた大きな理由は、売上10億円未満の中小建設業者の労務・外注費率(平均)が51.8%と平均を大幅に下回っていることです。規模の大小はともかく、外注にかかるコストは高くなると考えていましたが、規模が小さければ下請けとしての業務が主体で、外注化しない傾向にあるのではと推察しています。10億円以上~50億円未満の売上高の規模であれば、逆に労務・外注費率は上がっています。
――データをもとに推論できることは。
瓦田 規模の大きい建設業者は、資金力で技能者を集めることが出来ますが、小規模業者は技能者確保に苦慮しています。上場企業を含めて同様の調査をすればさらに外注費率は上がっていたでしょう。業界の二極化はさらに顕著となり、大手の建設業者であれば、下請け、孫請けの協力の下で人手不足の影響は多少なりとも軽減されますが、売上高10億円未満の会社は人を集める資金力が不足している企業が大半。人件費も高くなっていく中で、外注に頼るのは現実的ではないと言うことでしょう。ほかに理由が見当たりません。