【ポスト五輪】30億円以上の建設企業は増収
――建設業の企業間格差については。
瓦田 売上規模別で見ると、10億円未満が前年度比5.5%減、10億円以上20億円未満が同0.5%減、20億円以上30億円未満が同0.9%減。ところが、30億円以上50億円未満は同1.4%増でこれ以上の規模の建設企業はすべて増収です。
売上規模が小さいところでは人件費高騰により受注を控えざるを得ないなど、全体の売上高が減少傾向にあり、中堅以上はその影響をどうにかカバーできているということが窺えます。売上規模別労務・外注費率は売上高で見ると規模が大きければ、高くなる傾向にあります。
公共工事も一時的には増えていますが、小規模業者全体から見れば、あまねく良い影響を受けているわけでもないということでしょうか。
――後継者の不在も課題ですね。
瓦田 現経営者は、ジリ貧状態の企業であれば自分の代で閉じようと考え、休廃業の道を選択するというのは必然で、こうしたケースが多くなっていくでしょう。建設業の社長も高齢化が進んでいます。後継者の不在は深刻な問題ですが、休廃業する業者が増えれば、その企業で働く従業員はどうなるか。人手不足の時代ですからM&Aにより他社に吸収されるといった動きが加速してくるかもしれません。
時限立法であった金融円滑化法が終了した後も、引き続き多くの金融機関は返済や金利支払いを猶予するという対応をとっていました。倒産を抑制するためにとられた措置ですが、その対応もシビアになっていますから、一時的に救済された企業でも結局は淘汰されるケースが多くなっていくのではないでしょうか。
――ポスト五輪は。
瓦田 大型の公共工事の受注は、常に首都圏の大手ゼネコンが中心です。
業界全体では、一気に盛り返した感がありますが、地方ゼネコンはその恩恵は地域差もあり、限定的といってよいでしょう。東京五輪が終わっても同様の状態が続くのではないでしょうか。
中小ゼネコンの動向に注目
大手ゼネコンばかりを取材するメディアの情報によって、建設業全体が儲かっているように世間は思っている節が強いが、今後の建設業の動向は、10億円未満の中小・零細ゼネコンの行方にかかっていると言っても良いだろう。
やや規模感のある建設企業は、人材獲得のためにM&Aを狙い、仕事の獲得につなげていく方針を一部では打ち出している。
しかし、借金も多く、代表をはじめ会社の人材そのものが高齢化していればM&Aの対象に含まれず、休廃業の道を選択する可能性が高い。金融円滑化法により、延命した建設企業も多いが、本来であれば市場から退場すべき企業も少なくはなかった。
10年後の建設業界は、代表の高齢化などで大淘汰の時代が到来するかもしれない。
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