下関北九州道路に反対する理由がわからない
――見坂さんは、一時話題になった下関北九州道路を積極的に進めていますね。
見坂茂範 下関北九州道路は、長大橋のビッグプロジェクトでもなんでもないんです。たかが橋長2km程度の国道のバイパスなんですよ。関門橋は完成して45年が経っています。関門トンネルに至っては61年が経過しています。とくにトンネルは老朽化して、水漏りがスゴイんです。
藤井聡 で、浮揚圧力がスゴイんですよね。
見坂茂範 そう。今のところは二つの道路は問題なく通行できますが、15年後にはもうボロボロになっています。今ただちに必要ではないけども、将来のことを考えると、今から第三の道路をつくっていかないとダメなんです。
岡村正典 維持更新のことを考えると、絶対に必要なことだよね。
藤井聡 われわれは工学的な教育を受けているので、こういう話はすぐに理解できるけど、工学的な素養のない人には、何度説明しても理解できない人がいるよね。
見坂茂範 九州のトラック物流の大半は関門海峡を通って、東京や大阪などに運ばれています。関門海峡ルートが滞ってしまうと、福岡県、山口県だけの問題ではなく、九州全体の産業が大きな打撃を受けるんです。今新たなルートをつくっておかないと、将来の九州の人々が困るんです。
藤井聡 そらそやな。優先順位の問題はあるけど、関門海峡に新たなルートが必要なのは間違いないな。あとはプロセスやな。
見坂茂範 地元では「必要だ」という声が圧倒的です。
藤井聡 本九架橋やしな。国の問題やんか。地元だけの問題ちゃうし。なんで反対する国会議員がいるのか意味がわからん(笑)。

土木について熱く語り合う同級生3名(京大サロンにて)
見坂茂範 九州の物流が滞ると、当然東京や大阪にも影響が出ます。
藤井聡 こんな当ったり前のことに反対するのは、得体のしれない政治的な力学が働いているんやろな。
見坂茂範 目先のことだけしか考えていないとそうなる。
藤井聡 国政レベルで、工学的な素養のない党利党略的な人間の比率が増えると、必ず国益を毀損する。日本が衰退しているのは、まさに党利党略的な人間が増えたからですよ。日本の土木技術者の技術的議論が復権しない限り、日本の未来はないと思う。
見坂茂範 そうやね。
藤井聡 今のインフラを維持することは必要だけども、土木工学的な理由から、早晩維持できなくなるのが予想される。今のモビリティ、アクセシビリティが維持できないということは、経済活動規模も維持できなるということになります。それは由々しき事態でしょ。だったら、今から新たしい道路を整備しておきましょう。トータルで見ればそっちの方が安い。
昨年の台風21号で被害が出ましたが、大阪の防潮堤によって17兆円の被害を軽減したと試算されています。経済学的には、防潮堤整備の投資によって、17兆円の富を生み出したことを意味します。
防災についてはしばしば、後ろ向きな政策なので、経済成長には不要だと言われますが、決してそんなことはありません。そういう言説は、「今後災害が起こらない」ことを前提としています。
しかし、実際には災害が起こっているし、今後も起こり得ます。インフラによって、災害被害が防げたということは、それだけの富を生み出したことになるのでね。
見坂茂範 当然既存のルートは、しっかりとメンテナンスして長寿命化させていくが、いつか必ず通れなくなるときが来ます。通れなくなってからでは遅いんです。先を見越して手を売っていく必要がある。そういうことです。
藤井聡 もし新たなルートができなかった場合、本州と九州の流動性が低減しますよね。そうなると、本州と九州では九州が小さいので、九州を切り捨てることになってしまいます。日本は下関までで終わり。「九州は独自にボチボチやっとれや」ということになります。九州は北海道みたいになってしまいますね。ホント、今の北海道はかわいそう。
岡村正典 インフラ機能の維持を考えると、新ルートも至極まともな話だと思うけどね。
見坂茂範 地元ではまともな話だと捉える人が多いけどね。北九州市民の約7割が賛成しているし。
岡村正典 東京の人にはわかりにくいのかな。
藤井聡 受益者は誰でもわかるんでしょう。でも、技術者は受益者じゃなくても理解できる。だから逆に言うと「技術者ではない非受益者」にはわからない。だから、今の日本じゃあらゆるプロジェクトについてその必要性が理解できる人が圧倒的に少数になってしまう。
岡村正典 でも東京の人も受益しているわけですよね?
藤井聡 そうそう。
岡村正典 それがわかりにくい状況になっている。
藤井聡 技術者でなく、かつ直接受益者でない人の声が大きい。日本の政治はそこで動いているので、本当に必要なものができない。その結果、国民全体が疲弊しているという悪循環に陥っている。
経済学者には「詐欺師ども」が多い
岡村正典 首都は分散するべきかな?
藤井聡 いや、僕は首都は東京で良いと思う。それより、日本人が先進民主国家にふさわしい民度を持てば良いと思う。そうすれば、地方都市にも投資が進み、必然的に一極集中は緩和する。
だから、少なくとも政治家、官僚、有識者、コメンテーター、マスメディアなどの情報強者たちがまっとうになればずいぶん良くなると思う。
見坂茂範 先進国はインフラにしっかり投資しているんですよ。トランプ大統領ですら「軍事とインフラは大事だ」と言っています。インフラがしっかりしていないと、国の経済、産業は発展しないということを理解しているんです。
藤井聡 トランプさんは2兆ドル(約220兆円)のインフラ投資するって言ってるんでしょ?
見坂茂範 そう。ケタ違いのインフラ投資。日本のメディアはほとんど報じないけれど。
藤井聡 インフラを蔑ろにする政府をいただく国家は間違いなく滅びるよ。
見坂茂範 公共投資をすれば民需も拡大するので、相乗効果も出るんですよ。
藤井聡 普通の経済学者はそんな議論をしないよね。「公共投資をしても経済成長はゼロだ」などと言うんだけども。そんな見解、実証的には完全に反証されているのに、まだそんなこと言う輩が経済学には多い。
そんな経済学者は「学者の名を借りた詐欺師ども」ですね(苦笑)。
誰もコメントしていないのであえて言う。公共事業は財政が健全な時は肯定されますが、財政が厳しくなると否定されます。東日本大震災で私の設備会社は倒産しました。人は災害リスク音痴になっています。私がそうです。そこから、施工管理技士になり思うことは、日本はトラック物流システムの国であることと大量消費大量生産で国力を維持してきました。しかしながら維持・メンテナンスは世界的見てもダメな国です。これから、世界で様々な災害が起こります。日本は対応遅れると思います。
社会インフラを整備しない国は亡びる。
当たり前のことですよね。
自分で自分の首を絞める事をやりながら、社会が成熟する筈がない。
そのうち思い知りますよ。
身動きとれなくなって、狭い地域でしか動けない何百年か前の頃に戻った時にね
安かろうよかろうなんて近代化した昨今ありえない。
公共工事で利益を出してはいけない意味もわからない。
予定価格があり入札する以上は市場単価を超えていないのに高落札率=談合、だからすべて悪だの考えもよくわからない。
そもそもありえない程安い(市場単価)で請けている。
いいかげん国民はマスコミに騙されていることに気づくべき。
僕自身は土木に関して全く素人な理工系学生ですが、読んでいて心当たりのある話が多いと思いました。
緊縮財政は本当に酷いようですね。
そもそもインフラに金かけ過ぎ。
地震国なので高い技術力を持って整備は良いが仕様が厳しいし高品質を求める割には耐用年数が短い、メンテナンス方法や費用を全く考慮してない計画ばかり。
諸外国の様にもっと簡易にしてコスト下げてメンテした方が効率的ではないですか?
1国民として傍から見ていると作る事で満足してしまって次世代への引継ぎは考えて無いとしか思えないです。