新幹線フル規格は佐賀県にも巨大な利益がある
――九州新幹線(西九州ルート)が揉めていますが、藤井先生のお考えは?
藤井聡 九州新幹線(西九州ルート)については、国益的観点から言って、全区間フル規格で整備すべきだと考えています。長崎県の県益だけで言っても、フル規格でつくるべきです。
佐賀県が反対しているのは、佐賀県の県益、しかも、狭い視野での県益だけしか考えていないからです。佐賀県からしてみれば、博多駅へのアクセシビリティが少し便利になるだけなのに、コストが高過ぎると考えている。
しかし、それは間違いです。新大阪駅へのアクセシビリティを考慮すると、コストを上回る巨大な利益が存在しています。佐賀県のみなさんがそこに思いを馳せてもらいたい。それさえ理解してもらえれば、佐賀県におけるフル規格整備に対する反対は一瞬で消え去ると思っています。フル規格は佐賀県の巨大な利益になるのです。
専門用語で言えば、佐賀県は今、西九州ルートの問題は「ローカルミニマム」(”局所”最適解)にとどまっていて、「グローバルミニマム」(”全域的”最適解)に到達していないと言えます。公益というものは、狭い範囲で最適解を探すのと、広い範囲で最適解を探すのとでは、答えがまったく違ってきます。これは土木計画学で言うところの「非線形計画問題」なんです。
非線形計画問題における極めて一般的な概念に照らせば、「佐賀県はローカルミニマム、ローカルミニマムに陥ってんねんな」ということになります。西九州ルート問題に対して、この概念が適用された形跡がほとんどないのは問題であり、非線形計画問題の典型だと思います。
――四国新幹線はどうですか?
藤井聡 グローバルな最適解、国益の観点から早期に実現すべきだと確信しています。ただ、その計画は今、全然止まったままの状態です。止まっている理由は一つで、当初予算が760億円程度しかないからです。
なぜその程度で止まっているのと言えば、鉄道局予算枠が1000億円どまりだからです。では、なぜ1000億円どまりかと言えば、財務省のプライマリーバランス規律が原因です。
だから、鉄道局の予算を拡大しようとすると、「国交省の他の予算を削れ」と財務省が言ってくるのです。そうなると、鉄道局の予算を増やすことができなくなって、予算が硬直化してしまっているのです。だから結局は、国交省の他の予算をそのままに据え置きつつ、新幹線予算だけを純増させることが今、求められているのです。
そして、それをするためには、結局は国交省全体の予算を増やす事が必要で、そしてそのためには財務省が強要する「プライマリーバランス規律」を緩和、撤廃する必要があるのです。
僕の答えはここに収斂されるんです。内閣官房参与のときは、このプライマリーバランスを緩和、撤廃を最大の目標に掲げて、6年間仕事をしたわけです。今は閣外ではありますが、今でもこの仕事をしています。
プライマリーバランス規律を変えるためには、財務省を変える必要があります。財務省を変えるのは、官邸であったり、自民党の政調、税調などであったりします。そこには、いろいろな政治的な力学が必要です。
そもそも、この国の中枢には「官邸政府マシーン」みたいなものがあって、それに働きかけて、変えていく必要があるわけです。そして、今でも、自分の立ち位置からいろいろと働きかけて、新幹線整備についても少しずつ進展させようと様々な努力を重ねているところです。
見坂茂範 僕は、四国新幹線はあっても良いと思っています。採算性が厳しいなら、他の新幹線に比べて運賃を高く設定しても良い。それでも新幹線に乗る人は絶対いると思います。インバウンド需要も増えると思いますよ。
藤井聡 四国新幹線の整備効果はダントツに高いですよ。四国は、地理空間的に言って、大阪や山陽線などの国土軸との距離が極めて短いにもかかわらず、交通インフラが脆弱で移動速度が遅いので、時間的に遠いという状況にある。
そんな中で新幹線による高速移動が実現すれば、大阪や国土軸との距離が短い分、時間短縮が破格の水準で進む。結果、経済効果は莫大なものになります。四国4県に巨大なメリットがあることは、すでに試算が出ています。
だから、政府が緊縮的になりすぎず、しっかりと国債を発行して、早期に整備すればそれでよいのです。そうすれば、四国が発展するのみならず、全国的なGDPも成長し、中長期的に財政も豊かになります。間違いない。
岡村正典 インバウンドなどの観光客の呼び込みには、各県でのコンテンツ提供という努力が必要だと思いますが、移動手段で言えば、鉄道、道路については国レベルの計画が必要ですね。これができると格段に違ってくるんでね。
藤井聡 違ってくるね。
岡村正典 実際、瀬戸大橋と明石海峡大橋ができたことによって、人の流れが全然違ってきているので。
橋が一本通ることによる経済効果はスゴイ
藤井聡 四国の3本四架橋について、「ムダの代名詞」のように言う人がいるけど、完全に現実が見えていない意見だよね。あの橋がなかったら、四国がどうなっていたかイマジネーションがないんだよ。今四国の経済は疲弊しているけども、それでも橋があるから、この程度の水準で持ちこたえられている。もしもあの橋が無かったら、四国はもっと疲弊していたことは100%間違いない。
見坂茂範 昨年、本四架橋の視察に行ったんです。瀬戸大橋が通る瀬戸内海の真ん中に島があるんですが、今は大きな観光施設ができていて、観光客で潤っているんです。橋が一本通ったことによる経済効果はやはりスゴイんですよ。橋はそれ自体、観光資源になるんです。
藤井聡 橋ってロマンがあるよね。
見坂茂範 そうだね。
藤井聡 サイモン&ガーファンクルに「明日に架ける橋」という曲があるけども、これがもし「明日に架けるトンネル」やったら、なんか「暗〜」っていう感じになるもんね(笑)。
一同 (爆笑)。
見坂茂範 まあ、トンネルはトンネルでロマンあるけどね。青函トンネルとか。
藤井聡 もちろんそうだよね。石原裕次郎と三船敏郎の『黒部の太陽』も、高倉健の『海峡』もみなトンネルの話で、あれ見て当時は日本人が皆、心震わせたわけだし、今だってリニアなんてトンネルがないとどうしようもない夢だしね。そんな中でもやっぱり「橋には橋のロマンがある」ってことだよね。未だに「青函架橋が〜」と言っている人がいるし。
岡村正典 たしかに青函架橋は、降りる島はないかもしれないけど、橋からの景色を眺めながらいろいろ思いを馳せることはできるよね。それが観光にもつながるかも。
見坂茂範 しまなみ海道なんかは、サイクリング道路として人が集まっているよね。結果的に大成功している。
藤井聡 デフレの時代でさえ、これだけ経済効果があるのだから、これからインフレになったら、こうした橋の効果っていうのは、もっともっとものスゴイことになっていくだろうね。
誰もコメントしていないのであえて言う。公共事業は財政が健全な時は肯定されますが、財政が厳しくなると否定されます。東日本大震災で私の設備会社は倒産しました。人は災害リスク音痴になっています。私がそうです。そこから、施工管理技士になり思うことは、日本はトラック物流システムの国であることと大量消費大量生産で国力を維持してきました。しかしながら維持・メンテナンスは世界的見てもダメな国です。これから、世界で様々な災害が起こります。日本は対応遅れると思います。
社会インフラを整備しない国は亡びる。
当たり前のことですよね。
自分で自分の首を絞める事をやりながら、社会が成熟する筈がない。
そのうち思い知りますよ。
身動きとれなくなって、狭い地域でしか動けない何百年か前の頃に戻った時にね
安かろうよかろうなんて近代化した昨今ありえない。
公共工事で利益を出してはいけない意味もわからない。
予定価格があり入札する以上は市場単価を超えていないのに高落札率=談合、だからすべて悪だの考えもよくわからない。
そもそもありえない程安い(市場単価)で請けている。
いいかげん国民はマスコミに騙されていることに気づくべき。
僕自身は土木に関して全く素人な理工系学生ですが、読んでいて心当たりのある話が多いと思いました。
緊縮財政は本当に酷いようですね。
そもそもインフラに金かけ過ぎ。
地震国なので高い技術力を持って整備は良いが仕様が厳しいし高品質を求める割には耐用年数が短い、メンテナンス方法や費用を全く考慮してない計画ばかり。
諸外国の様にもっと簡易にしてコスト下げてメンテした方が効率的ではないですか?
1国民として傍から見ていると作る事で満足してしまって次世代への引継ぎは考えて無いとしか思えないです。