仲間と現場の話をいつもしているから、最先端の研究ができる
藤井聡 でも、こういう現場を巡る話って、本当に研究者にとって宝物だと思う。例えば僕は今「MMT」、これは「Modern Monetary Theory」、「現代貨幣理論」っていう経済理論を研究してるんだけど、この理論は現在の経済学の中では完全に”異端”の扱いを受けています。なぜ経済学者たちが緊縮経済学なのかと言うと、彼らの師匠が緊縮財政学だからです。
で、実際のところ今、日本でMMTを大学で研究として取り扱っている学者は、よくよく見まわしてみると僕だけになってしまっている。で、なぜ僕がこのMMTに注目して、学生指導しながら研究を進めているのかというと、MMTという経済理論は正しい経済政策、財政政策、インフラ政策を進める上で、極めて有用な”真実”を実践的、理論的に明らかにした、ほとんど唯一の正しい経済理論だからです。
つまり、僕は、現場で聞いた問題を解消するために必要な理論を勉強しているというわけです。いわば、「師匠にやらされてる」「師匠に教えてもらった事を何となく続けている」んじゃなくて、「現場から要請」があるから、海外の文献や研究者を交流しながらMMTの研究をやっているわけです。
で、僕がなぜ、こういう研究スタイルでやっていけるのかと言うと、見坂くんや岡村くんのような仲間とずっと現場の話をしてきたからです。こういう現場の問題をどうやったら解決できるのかをあれこれ考えて、「今辿り付いた理論というのがMMTだった」というわけです。
そもそも僕は、社会科学者はこうあるべきだと考えています。現場の声と抽象的な理論がどういう対応関係にあるのかを常に考えながら、世間に処方箋を提供していくというのが、本来あるべき社会科学者としてのスタイルだし、実際、社会科学者の創始者の一人であるデビッド・ヒュームだってそういうスタイルを提唱してたんです。つまり、社会科学には工学的素養が必須なわけです。
で、よくよく考えると、これもやはりローカルミニマム(局所最適解)の問題なんだろうと思います。非常に「狭い範囲」で最適解を考えた結果が、今の日本の緊縮財政なんです。MMTはもっと広い領域で「政府がなすべき最善の仕事を考えましょう」と言っているわけです。
そのためには、公共投資を増やす、公務員を増やす、減税をするなどのいろいろな方法があって、これら実行すれば、まだまだ日本はいくらでも良くなるポテンシャルを秘めているわけです。
本来、それを技術的に語るのが経済学者なんですが、彼らにはデータを使わない新興宗教のようなところが色濃くあるので、残念ながらローカルミニマムから一向に抜けられない。これを抜け出すには、「焼きなまし法」的なアプローチ(注:最適化理論の一つ。簡単に言うと、普段と違うことをときどき、違う角度で考えるようにすると、スゴく良い解決策が見つかるという理論)が必要だと考えています。
ただ、僕のスタイルは、経済学者からはもちろんのこと、少々残念ですが、土木計画学の人間からもしばしば異端扱いされています。心ある仲間達は学会の中にももちろんいますが、実際のところ風当たりも強いし、必ずしも楽ではない。ぶっちゃけ言って「しんどいなあ」と思う事も多い。
それでも何とかスタイルを変えずにやっていけているのは、お二人のような友人がいて、いつもああだこうだと話をしているからだと思いますね。
見坂茂範 藤井くんは、われわれにとって非常に良い接着剤なんですよ。彼は国土政策を考える上で、土木系公務員が抱えている課題を理解しています。その上で、彼が学者として、言論人として世の中に発信してくれる。接着剤としての彼の役割をちゃんと理解してくれています。
藤井聡 言論人としての僕の立ち居振る舞いには、国交省の方々はヒヤヒヤされることも多いとは思いますが(笑)。
一同 (笑)。
岡村正典 ゼネコンにいる人間が藤井くんをどう見ているかと言うと、われわれにとって心地良いところだけ切り取っているかもしれないけども、多くは建設業に味方だと思っていると思います。
自分たちも同じことを大きな声で言いたいけど、世間から「自分たちの仕事がほしいからまた言ってるよ」と反応されるので言えない。そういう意味で、藤井くんが代弁してくれるので、非常にありがたい存在であり、応援しているという感じがあります。
個人的には、藤井くんとは1年生のころから、しょうもないことばっかりやってきましたが(笑)。
藤井聡 ホンマホンマ。学生のときは、ホンマしょうもないこと以外、一切やってなかったなぁ(笑)。
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誰もコメントしていないのであえて言う。公共事業は財政が健全な時は肯定されますが、財政が厳しくなると否定されます。東日本大震災で私の設備会社は倒産しました。人は災害リスク音痴になっています。私がそうです。そこから、施工管理技士になり思うことは、日本はトラック物流システムの国であることと大量消費大量生産で国力を維持してきました。しかしながら維持・メンテナンスは世界的見てもダメな国です。これから、世界で様々な災害が起こります。日本は対応遅れると思います。
社会インフラを整備しない国は亡びる。
当たり前のことですよね。
自分で自分の首を絞める事をやりながら、社会が成熟する筈がない。
そのうち思い知りますよ。
身動きとれなくなって、狭い地域でしか動けない何百年か前の頃に戻った時にね
安かろうよかろうなんて近代化した昨今ありえない。
公共工事で利益を出してはいけない意味もわからない。
予定価格があり入札する以上は市場単価を超えていないのに高落札率=談合、だからすべて悪だの考えもよくわからない。
そもそもありえない程安い(市場単価)で請けている。
いいかげん国民はマスコミに騙されていることに気づくべき。
僕自身は土木に関して全く素人な理工系学生ですが、読んでいて心当たりのある話が多いと思いました。
緊縮財政は本当に酷いようですね。
そもそもインフラに金かけ過ぎ。
地震国なので高い技術力を持って整備は良いが仕様が厳しいし高品質を求める割には耐用年数が短い、メンテナンス方法や費用を全く考慮してない計画ばかり。
諸外国の様にもっと簡易にしてコスト下げてメンテした方が効率的ではないですか?
1国民として傍から見ていると作る事で満足してしまって次世代への引継ぎは考えて無いとしか思えないです。